ヤタらブログ

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種苗法 改正案 まとめ

柴咲コウさんがTwitterで問題提起をして、色々叩かれたりした訳ですが

種苗法に興味を持ち自分なりに調べてみたので、此処に農林水産省のデータを交えてざっくりと残しておきます



目次

まとめ

種苗法を改正することで新品種の登録は促進され、知的財産は護られ易くなります

巷で騒がれてるような海外流出への抑止力は弱く、流出後の為の支援策でしかありません

では何が問題だったのか、主な点は農家さんの問題であるにも関わらず、農家さんの自家増殖制度への認知度の低さに問題があった訳です

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農家といっても大きくは、種苗農家と生産農家に分ける必要があります

反面、知的財産から漏れてしまっている品種が保護されていないのも問題だと思います

勘違いされてる方々の多くは、種苗法の対象者や対象物、種苗法と種子法、種苗農家と生産農家などをごっちゃにしてしまってる訳ですね

じゃあ食卓関係ないじゃん←それは種苗法だけを見てるからだと思います

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種苗法

種苗法とは、良く例えられている著作権が分かり易いと思います

著作権者=育成者権

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日本で登録しただけでは、諸外国に適用されません

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登録品種

新品種を登録して、制限などを決められます

認められるには、区別性·均一性·安定性·未譲渡性などを満たす必要があります

権利は最長で25〜30年(品種による)

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一般品種

在来種、固定種、権利切れの品種=登録品種でない品種

本来、一般品種は種苗法には関係ありません

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自家増殖(自家繁殖)

種子繁殖、育てた作物から種子を取り出し再び蒔いて繁殖

栄養繁殖、種子では無く根·茎·葉などから繁殖

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種苗法改正案

改正前と後でどう変わるのか

海外流出防止について

外国人による窃盗には効力はありません、何故なら種苗法の対象では無いからです

それは警察や税関の仕事ですから

抑止力にならないことは農林水産省が認めています

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農家の方が紅秀峰をオーストラリア人に手渡し流出させた事例があります←こういった場合には有効です

※育成した農家さん自体が国外に持ち出すことは現行法では合法ですけど、そういった事例は確認されていません

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つまり、改正案でも状況は変わらないということですね

では江藤農林水産大臣は、何を根拠に誤解は解けると言ってたんでしょうか

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海外流出後について

農林水産省は海外での品種登録(育成者権)の重要性を訴えています

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海外流出(繁殖)の原因は、自らが知的財産を保護していなかったからです

登録のし忘れであったり継続料の未払いであったり

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国内で譲渡(登録)開始から4年以内に海外(各国)での品種登録をする必要があります

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出願経費(定額·1/2)や侵害対応経費(2/3)の支援が受けられます

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品種登録(国内)へのハードル

改正案では登録料や継続料など料金が下げられています

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国内登録出願数の減少

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種苗の判別

改正案では種苗の判別を簡素化する為、特性表を用いるとあります

登録品種には特性表が作成されるでしょうが、一般品種は対象では無いため特性表は無いでしょう

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自家増殖制限の拡大

栄養繁殖の禁止(21条の削除)

種子繁殖品種の一部を禁止

※現在の登録品種と一般品種の割合は1:9と言われてますが、改正案により品種登録が促進されているのと後述する法律により集約を促され、比率は大きく変わる可能性もあります

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種苗開発には莫大な時間と労力が掛かる為、開発費を回収する為にはやむを得ない訳です

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国内での罰則を強化

懲役10年または個人では1000万円、法人では3億円の罰金に

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その他

大学など公的機関への利用制限=民間による自由競争を促すため公的関与がしにくくなる様に(15条4項が削除)

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ゲノム編集

ゲノム編集食品は解禁されており、表示義務もありません

この技術は種苗開発にも活かせる為、在来種や固定種を品種登録化する可能性も出て来ます

中には農林水産省に確認をして、有り得ないという回答を得たとおっしゃる方もおられますが

農研機構のQ&Aの中にも、在来種自体は無理だけど交配などをして、区別性が認められれば出願可能であると認めています

改正案では、種苗の判別は特性表を用いる訳です

※ゲノム編集が危ないと言ってる訳ではありませんし、改正案で触れられている訳でもありません

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種苗法で護られる種苗農家と登録品種を生産する農家、種苗法では護られない一般品種を生産する農家

登録品種=種苗法、一般品種=???

短期的には問題ないかもしれませんが、長期的に見た場合でも問題ないと言えるでしょうか

9割が一般品種でも半数近くは、市場で勝負にならない物だったりする訳ですね

地域性(特定の地域にしか根付かない品種など)や季節なども関係しますし

登録品種と一般品種の割合は大きく変わる可能性もある訳です

一般品種から登録品種に生産を移行するにせよ、勿論コストも掛かりますが、販路など環境がガラッと変わったりする訳です

個人的には抱き合わせ法案だったり、妥協点を模索して頂けたらと思いますが

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関連する法律

種子法の廃止

昔は行政が携わってきたので、安定した種苗の維持と開発が行われてきましたが、民間企業の参入を促すため廃止されました

○種子法廃止の疑問点

地方へは特定財源から一般財源化に

TPPで安倍総理が聖域だと言っていた、米·麦·大豆が対象です

○自家増殖が難しい民間企業育種の品種(f1)、米の例

みつひかり(三井化学)、つくばSD(住友化学)、とねのめぐみ(日本モンサント)←多収米と呼ばれ、企業農家レベルでないと扱うのが難しく一般市場では殆ど見掛けない業務用米

○一般市場で見掛ける民間企業育種の米の例

金芽米(東洋ライス)、金賞健康米(おくさま印)など

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農業競争力強化支援法

種子法廃止に伴い農業競争力強化支援プログラムが作られ、それを元に法律化

端的に言うと、才能とやる気が伴えば支援を受けれるかもしれないということらしいです

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○農業競争力強化支援法の疑問点

日本に籍を置く海外企業は無料で知見を得ることが出来ます

種苗法改正案では、この部分(知見)に少し規制を掛けることが出来るようですが、実行力は低いだろうとの見方もあります

あと品種が多すぎるので集約する様にとも定められています

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種苗法改正案で品種登録を促進させて何を集約するんでしょうか

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因みに、例で挙げられている新潟県コシヒカリは期限切れ品種なので一般品種に該当します

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種子法廃止や種苗法改正案に伴った動き

野党は種子法復活案を提出

在来種保全·活用法案を発表

地方自治にて種子条例の施行及び制定

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※この辺は利権も絡む話でしょうから、純粋な目では見れない部分もありますね

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各法律などを踏まえ考えること

種子法廃止に始まり改正案15条4項削除により、種苗開発は公的機関の手から大きく離れるでしょう

なので、種苗の価格は上がらないという農林水産省の根拠(農研機構)が崩れる訳です

本来なら自由競争で価格は下がる筈ですけど、コストが上がる訳ですから市場価格も上がるでしょうし

様々な品種が生まれる=多様性、つまり選択肢の幅が農家にとっても消費者にとっても広がるということ

でも良く考えてみると、食料自給率は年々減少傾向で、輸入に頼ってる部分も大きい

何故なら農家さんの高齢化に伴い農業生産者さんが減少してるからです

TPPにより、関税(段階的)撤廃された農作物も輸入される現状

※勿論輸出もしてるけど

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はたして改正案で生産者さんは護られるんだろうか

コロナ渦に限った話では無いけど、海外が輸出制限掛けて来た場合どうなるのか

多様性に向かうということは、食品ロスにも繋がり兼ねないし

現在の日本での食の多様性という考えのままで大丈夫なんだろうか

食の多様性を改めれば、食料自給率も少なからず改善されると思うけど

何を集約して、何処を着地点にするんだろうか

何にせよ、農家さんだけでなく消費者に連鎖する話なんですよ



2050年における国内と世界の食料需要

農林水産省農業競争力強化支援法内での予想です

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国内の市場規模は縮小する可能性(-24%)と世界の農産物マーケットは拡大の可能性(+32%)

この資料は平成29年(2017)6月に作成された物です

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20年前は1995年のデータで統一されてますが、現在のデータは2015年で統一されている訳ではありません

どう読み取るかは人それぞれでしょうけど

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余談

農家さんを中心に記してみましたが、種苗開発をしているのは種苗農家よりも種苗会社です

日本の会社だとサタカのタネ、タキイ種苗(2社で国内シェア50%、世界シェアだと各5%)

野菜苗最大手のベルグアースなど

海外だとモンサント(バイエル)、シンジェンタ(ケムチャイナ)など

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農業競争力強化支援法と改正案で触れた知見に対する規制は、台頭してきてるケムチャイナを牽制してるのでは?という見方もあるそうです

それは出願数の異常な高さからも読み取れるかと思います

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農林水産省の目論見としては、種苗会社の強化=輸出拡大の重要性←国内市場の拡大は見込めないと

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と改正案でも農業競争力強化支援法の中でも結論づけられています

(端的に言うと、自動車産業と同じ構図にしたいという意向だと思いますが)

農林水産省が根拠にしている国内市場の拡大が見込めない=国内市場規模の縮小が意味することとは?

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