種苗法 改正案 まとめ
柴咲コウさんがTwitterで問題提起をして、色々叩かれたりした訳ですが
種苗法に興味を持ち自分なりに調べてみたので、此処に農林水産省のデータを交えてざっくりと残しておきます
目次
まとめ
種苗法を改正することで新品種の登録は促進され、知的財産は護られ易くなります
巷で騒がれてるような海外流出への抑止力は弱く、流出後の為の支援策でしかありません
では何が問題だったのか、主な点は農家さんの問題であるにも関わらず、農家さんの自家増殖制度への認知度の低さに問題があった訳です
農家といっても大きくは、種苗農家と生産農家に分ける必要があります
反面、知的財産から漏れてしまっている品種が保護されていないのも問題だと思います
勘違いされてる方々の多くは、種苗法の対象者や対象物、種苗法と種子法、種苗農家と生産農家などをごっちゃにしてしまってる訳ですね
じゃあ食卓関係ないじゃん←それは種苗法だけを見てるからだと思います
目次に戻る種苗法改正案
改正前と後でどう変わるのか
海外流出防止について
外国人による窃盗には効力はありません、何故なら種苗法の対象では無いからです
それは警察や税関の仕事ですから
抑止力にならないことは農林水産省が認めています
農家の方が紅秀峰をオーストラリア人に手渡し流出させた事例があります←こういった場合には有効です
※育成した農家さん自体が国外に持ち出すことは現行法では合法ですけど、そういった事例は確認されていません
つまり、改正案でも状況は変わらないということですね
では江藤農林水産大臣は、何を根拠に誤解は解けると言ってたんでしょうか
目次に戻る海外流出後について
農林水産省は海外での品種登録(育成者権)の重要性を訴えています
海外流出(繁殖)の原因は、自らが知的財産を保護していなかったからです
登録のし忘れであったり継続料の未払いであったり
国内で譲渡(登録)開始から4年以内に海外(各国)での品種登録をする必要があります
出願経費(定額·1/2)や侵害対応経費(2/3)の支援が受けられます
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自家増殖制限の拡大
栄養繁殖の禁止(21条の削除)
種子繁殖品種の一部を禁止
※現在の登録品種と一般品種の割合は1:9と言われてますが、改正案により品種登録が促進されているのと後述する法律により集約を促され、比率は大きく変わる可能性もあります
種苗開発には莫大な時間と労力が掛かる為、開発費を回収する為にはやむを得ない訳です
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関連する法律
種子法の廃止
昔は行政が携わってきたので、安定した種苗の維持と開発が行われてきましたが、民間企業の参入を促すため廃止されました
○種子法廃止の疑問点
TPPで安倍総理が聖域だと言っていた、米·麦·大豆が対象です
○自家増殖が難しい民間企業育種の品種(f1)、米の例
みつひかり(三井化学)、つくばSD(住友化学)、とねのめぐみ(日本モンサント)←多収米と呼ばれ、企業農家レベルでないと扱うのが難しく一般市場では殆ど見掛けない業務用米
○一般市場で見掛ける民間企業育種の米の例
金芽米(東洋ライス)、金賞健康米(おくさま印)など
目次に戻る各法律などを踏まえ考えること
種子法廃止に始まり改正案15条4項削除により、種苗開発は公的機関の手から大きく離れるでしょう
なので、種苗の価格は上がらないという農林水産省の根拠(農研機構)が崩れる訳です
本来なら自由競争で価格は下がる筈ですけど、コストが上がる訳ですから市場価格も上がるでしょうし
様々な品種が生まれる=多様性、つまり選択肢の幅が農家にとっても消費者にとっても広がるということ
でも良く考えてみると、食料自給率は年々減少傾向で、輸入に頼ってる部分も大きい
何故なら農家さんの高齢化に伴い農業生産者さんが減少してるからです
TPPにより、関税(段階的)撤廃された農作物も輸入される現状
※勿論輸出もしてるけど
はたして改正案で生産者さんは護られるんだろうか
コロナ渦に限った話では無いけど、海外が輸出制限掛けて来た場合どうなるのか
多様性に向かうということは、食品ロスにも繋がり兼ねないし
現在の日本での食の多様性という考えのままで大丈夫なんだろうか
食の多様性を改めれば、食料自給率も少なからず改善されると思うけど
何を集約して、何処を着地点にするんだろうか
何にせよ、農家さんだけでなく消費者に連鎖する話なんですよ
2050年における国内と世界の食料需要
※農林水産省、農業競争力強化支援法内での予想です
国内の市場規模は縮小する可能性(-24%)と世界の農産物マーケットは拡大の可能性(+32%)
この資料は平成29年(2017)6月に作成された物です
20年前は1995年のデータで統一されてますが、現在のデータは2015年で統一されている訳ではありません
どう読み取るかは人それぞれでしょうけど
目次に戻る余談
農家さんを中心に記してみましたが、種苗開発をしているのは種苗農家よりも種苗会社です
日本の会社だとサタカのタネ、タキイ種苗(2社で国内シェア50%、世界シェアだと各5%)
野菜苗最大手のベルグアースなど
海外だとモンサント(バイエル)、シンジェンタ(ケムチャイナ)など
農業競争力強化支援法と改正案で触れた知見に対する規制は、台頭してきてるケムチャイナを牽制してるのでは?という見方もあるそうです
それは出願数の異常な高さからも読み取れるかと思います
農林水産省の目論見としては、種苗会社の強化=輸出拡大の重要性←国内市場の拡大は見込めないと
と改正案でも農業競争力強化支援法の中でも結論づけられています
(端的に言うと、自動車産業と同じ構図にしたいという意向だと思いますが)
農林水産省が根拠にしている国内市場の拡大が見込めない=国内市場規模の縮小が意味することとは?
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